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相続放棄を行うと形見分けとして遺品を受け取れない?

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【相談NO.4】相続放棄を行うと形見分けとして遺品を受け取れない?

故人愛用の品を形見分け、でもその愛用の品が高価な物だったら受け取れない?

形見分けの腕時計が高価な物だったら…

先日父親がなくなりました。

私の家庭は父母私の3人家族で、父には他に兄妹もおらず父の両親も既に亡くなっていることから、父の相続人は私と母親の二人です。

父は生前自営業(工場の経営)を行っていましたが、その事業はお世辞にもうまくいっているとはいえず、亡くなったときに約1000万円の借金がありました。このことは私も母も把握しており、父が亡くなった段階で工場をたたみ、父の相続を放棄すれば父の借金を我々が負わなくていい、ということを税理士の先生にうかがい、そうする方向で話はすすんでいました。

遺品を整理していた際に、父が長年身に着けていた腕時計を発見し、形見分けとして私がその腕時計をもらうことになりました。生前、父は「こんな古い腕時計には大した価値はない。これを売って借金を変えそうにも焼け石に水だ。」という話をよくしていたので、何の問題もないと思っていたのですが、念のため先日質屋に持っていってみたところ、「アンティークで非常に価値のある腕時計だ。」とのことで、なんと100万円もの価値が付いてしまいました。

知らなければよかったのかもしれませんが、知ってしまった以上この処理に困っています。

私としては父の思い出の品なので売りたくはないのですが、これだけ都合よく相続できる、そんな方法はあるのでしょうか。

形見分けの品物が高価な物だった場合の扱いについて、弁護士の見解は?

相続放棄と遺産、形見分け弁護士の見解

まず、従前のお考えのように相続放棄を行う場合、この腕時計を受け取ることはできません。

相続放棄を行えばそもそも相続人は被相続人の相続人としての地位を相続発生時、つまりはお父様が亡くなったタイミングから有しないことになるためです。

形見分けとして財産を相続人が有する場合、何が問題になるかといえば、民法921条3号の財産の「隠匿」に該当するかどうか、です。これに該当するとなれば、相談者の方は同条柱書が定めるように、「単純承認」したことになり、債権債務を全て相続する結果になってしまいます。

この点について、仮に今回の腕時計の価値が100万円ではなく1万円、あるいはそれ以下のほぼタダ同然のものだったとしましょう。そうすると裁判例の傾向からしても、単純承認事由とはならないと考えられます。

今回のように100万円の価値がある場合、他のお父様の財産にどのようなものがあるか、にもよるかとは思いますが、その価値を認識してしまっている以上、原則としては相談者の方がお父様の特定の債権者の債権回収を困難にするような意図、目的を有していなかったとしても、民法921条3号の相続財産の隠匿に該当するとされることになるでしょう。特に今回のお話ですと、特に他に財産があるというお話ではないようですので、その可能性は高いと思います。

仮に今回の腕時計の価値をまったく知らずに、お父様のお話を信じており、お父様を単に偲ぶ、というものであったのならば「隠匿」が、相続人が被相続人の債権者等にとって相続財産の全部又は一部について、その所在を不明にする行為をいうと解されているので、いわゆる形見分けとしてその所持が単純承認事由に該当しなかった可能性はあったといえます(ただし、今回の相談者の方のように、リスクヘッジするという意味では鑑定を行うべきでしょう。)。

形見分けとして許されるかどうかはそのものの価値と相続人の意図から決定されることになります。

お父様の形見である腕時計を手にする方法はないのか?

故人愛用の品を手元に残すには

最も確実にその腕時計を手にする方法は限定承認(民法922条)ということになります。

限定承認とは、相続によって得たプラスの財産について、その範囲でのみ被相続人の債務及び遺贈を弁済するシステムのことです。つまり一応、相続を承認するものの、債務支払いの限度はプラスの範囲でしか負わず、マイナスが出れば引き受けない、というシステムということになります。

この手続きには、相続人全員の承諾が必要です(923条)。また、相続開始を知ったときから3か月以内に家庭裁判所に対して限定承認申述書を提出する必要があります(924条)ので、相談者の方については、ここは問題になりうるでしょう。

この手続きを履践すると、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価額(本件であれば恐らく100万円なのでしょうが)を相続人、つまり相談者の方が弁済することで競売に代わり、腕時計を手に入れることができます(932条)。

このように限定承認については手続きが複雑である上、そもそも適正価値なのかどうかを把握する必要があります。また、適正に行わなければ上記のように単純承認事由に該当することもあり得ます。

適切に所持できるよう、早めに弁護士に相談に行くのが解決にとっての早道です。

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